巨大建造物を次々と建てたエジプト第一九王朝三代目ラムセス二世。彼が残した最大規模の建造物として、紀元前一二五〇年頃、ナイル西岸に建てたアブ・シンベル神殿がある。神殿の正面は高さ三三メートル、幅三八メートル、奥行き六三メートル。入り□にはラムセス二世の高さ二一メートルの巨像が威風堂々と四体並び、内部には彼の戦いの模様を描いたレリーフなどが壁全体に彫られている。ラムセスとは「太陽神、ラーから生まれた」という意味を持ち、王は臣下から太陽神「ラー」として崇められることを望んだといわれている。
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その事実を物語るようにラムセス二世像の頭を飾るヘビは太陽神の象徴。さらに、岩山に掘られたアブ・シンベル神殿は、春分の日と秋分の日の年二回、日の出の太陽光線が最奥の至聖所に差し込み、アメン・ラー神や神格化されたラムセスニ世など四神の倚像を照らし出すよう設計がされている。アブ・シンベルなどナイル川上流域はヌビア地方とよばれているが、古王国時代(紀元前二七〇〇−二二〇〇年頃)に物資の中継地点として栄えたこの一帯には、ほかにもエジプト史を語る上で欠かせない遺跡群がある。「ナイルの真珠」とよばれるフィラエ島にはイシス神殿、ナイル川沿いにはカラブシャ神殿やベトエルワーリ神殿がある。一九六〇年、アブ・シンベル神殿がアスワン・ハイ・ダム建設のために水没の危機にさらされた。ユネスコは、遺跡救済のための世界的なキャンペーンを行った。その結果、多数の国が調査隊を組織してこの地を訪れ、多額の寄付金が集まった。